次代を見据えて、私たち滋賀経済同友会は、地域の社会的課題を解決するために、企業自らが新たなイノベーションを起こし、地域の持続可能な発展に貢献できるよう努めていきます。
滋賀経済同友会は、これまで「環境と経済の両立」「先進的・開拓的なCSRへの取り組み」「環境先進県 滋賀」として、滋賀県経済の成長のあるべき姿を追求してきた。2004年には、企業経営の礎となる近江商人の商道徳「三方よし」の精神をCSRの原点とし、現代企業に問われる「社会配慮型経営」と「環境配慮型経営」の考え方を融合させた「滋賀CSR経営モデル2004」を構築し、表彰制度「滋賀CSR 経営大賞」を実施してきた。
21世紀の現在において、持続可能な社会を実現するために、グローバルな視点では気候変動(地球温暖化)や貧困問題、日本国内では少子高齢化、人口減少、地方創生などの社会的課題を、企業が本業(ビジネス)を通じて解決していくことがより一層求められている。企業が自ら新たなイノベーションを起こし、新たなマーケットを創造し、付加価値を高めることによって、地域の持続可能な発展に貢献できる新しいビジネスを創り出していくことが不可欠となってきた。
ここに「ニュー・グリーン成長社会」※を実現する意義を見出すことができる。
※「ニュー・グリーン成長社会」とは、地域の社会的課題を解決したいという意欲を持つ企業同士がつながり、企業自身が新たなイノベーションを起こす体質を身に付け、持続可能な地域と経済を創造することができる社会。
アウトサイド・インとは、社会的課題を基点にした新規ビジネスの創出を指す。
アウトサイド・インは、2015年9月に国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」のビジネス指南書「SDGコンパス」で示された概念である。下の図では、社会的課題を基点にしたベクトル(右上から左下)と、企業のリソース(人材、技術、資金など)を基点にした左下からのベクトルがぶつかるところに新規ビジネス(モデル)の可能性があることを指している。
SDGsは、17目標・169ターゲットの達成に向けて、企業を主要な実施主体の一つに位置付け、課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを期待している。
「SHIGA 戦略的CSR 経営モデル2030」では、CSRの実践(第1のアプローチ)とCSVの実現(第2のアプローチ)を同時実現し、さらにそれを超える「第3のアプローチ」を目指していく。
進化形(第3のアプローチ)として、社会的課題からビジネスモデルを考えるアウトサイド・イン・アプローチ(社会基点)による、滋賀県企業が2030年のありたい姿を実現する。
そのモデルが「SHIGA戦略的CSR経営モデル2030」である。
例:
21世紀にふさわしい「滋賀の産業モデル」を確立するために、2030年の滋賀の「ありたい姿」を念頭に、社会的課題を解決するべく、自社の強みを活かして、新機軸のビジネスモデルを構築する新たな経営戦略。
アウトサイド・インのビジネスアプローチを取り込んだ「SHIGA戦略的CSR 経営モデル2030」を実践するためのステップを紹介する。
滋賀経済同友会は2016年夏、会員企業に対して、「滋賀で最も緊急を要する課題」に関するアンケート調査を行った。そのなかで、回答割合(複数回答)の多かった社会的課題が下記の図である。
さらに、そうした社会的課題を解決するモデル式を着想した。
①琵琶湖の水質悪化×②水・空気フィルターの製造技術×③合繊・膜メーカーとの連携
=④水質浄化フィルターの改良・開発と事業化
①大規模災害への防災・減災対策×②防災教育、BCP策定ノウハウ×③損保会社、商工会、金融機関等との連携
=④家庭向け・法人向け・BCPコンサルティング事業
①空き店舗の増加×②不動産開発、駅前老朽化店舗の増加×③地元行政との連携
=④駅前を軸とする高齢社会対応型の店舗・行政機能・病院等のマッチング
①待機児童の増加×②遊休土地、大型店舗、退職保育士の確保×③地域教育施設との連携・協業
=④企業内保育施設の設置・運営(地域内待機児童にも開放)
必ずしも、アウトサイド・インを意識していなくても、これまで企業が社会的課題の解決を基点にビジネスを創出してきた事例はたくさんある。
その一部を紹介する。ロゴはSDGsの17ゴールのうち、貢献している分野を表している。
世界ではまだ3人に1人が安全で衛生的なトイレを使えず、感染症にかかる危険と隣り合わせにある。
UNICEFによると、下痢性疾患で亡くなる乳幼児の数は1日800人以上に上る。LIXILは2016年10月にSocial Sanitional Initiatives部を新設し、トイレ事業を通した社会的課題解決ビジネスを本格化させた。
2020年までに1億人の衛生環境の改善を目指す。その一つが、同社が開発した簡易式トイレ「SATO(SAFE TOILET)」だ。
現地生産を行い、1台数ドル程度で販売。SATOは現在、15か国以上で120万台以上使われている。
明治5(1872)年に創業した「たねや」は、近江八幡に拠点を置き、売上高は200億円を超える。同社は約20年前、食の安全・安心と地球環境への負担を考え、自社農園「たねや永源寺農園」で無農薬のよもぎ栽培を始めた。
同社は、近江八幡の広大な地「ラ コリーナ近江八幡」に、森・里・海(湖)を含む美しい里山づくりを進めている。
2015年1月にオープンした和・洋菓子のメインショップ、本社、専門ショップなどを展開し、中心地にある田んぼでは、社員や地元の学生が参加して無農薬栽培で田植えや稲刈りを行い、持続可能なオーガニック農業の拠点にすることを目指す。
ボーダレス・ジャパンは、社会起業家が集うプラットフォームカンパニーとして2007年3月に創業。「差別偏見」「貧困」「環境破壊」などの社会問題を解決する18事業を国内外で展開している。
多国籍コミュニティハウス「BORDERLESS HOUSE」、オーガニックハーブで貧困農家の収入をアップする「AMOMA natural care」、バングラデシュに雇用を作るビジネス革製品「Business Leather Factory」など、事業領域は多岐にわたる。2017年度の売上高は40億円を超える。